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『宙わたる教室』(伊与原新 著) |
皆さま、こんにちは。奈良県SSHコーディネーターの山田です。
突然ですが、皆さまは、『宙わたる教室』という小説をお読みになられたことがありますか。この小説は、地球惑星科学の研究者である伊与原新さんという作家によるもので、昨年末にドラマ化され、NHKで放送されていたので、印象に残っておられる方もいるのではないでしょうか。話の内容は、様々な境遇にある定時制高校の生徒たちが、困難に立ち向かいながら主体的・創造的に研究を行い、ついには日本地球惑星科学連合高校生セッションで優秀賞を受賞するといったものです。
実はこのお話は、完全なフィクションではなく、モデルになった学校があります。それは、大阪府立大手前高等学校定時制の課程と大阪府立春日丘高等学校定時制の課程です。今から8年前の2017年5月に千葉県幕張メッセで開催された日本地球惑星科学連合高校生セッションで、重力可変装置を用いて火星表層の水の流れを解析した研究は、聴衆の度肝を抜くような発表で、両校の合同チームは優秀賞を受賞しました。そのことは、私の記憶には深く刻まれているのですが、それは奇しくも私の指導したチームもこの大会で発表を行ったからです。この年の私の学校のチームは、佳作に入るのがやっとでしたので、定時制チームの発想力の豊かさに、大いに感服させられました。当然、定時制チームの境遇については、知る由もありませんが、資金も時間も十分にあるSSH校に比べ、限られた予算で限られた時間を上手に使った素晴らしい研究だった事を思い出します。ちなみに、この定時制合同チームは、実験装置に改良を加え、2018年の大会で最優秀賞に輝くばかりでなく、日本物理学会ジュニアセッションにおいても数多くの賞を受賞したのです。この様に紹介すると、小説の続編が出版されそうにも思えますね。とにかく、探究活動に必要なものは、飽くなき好奇心と困難にも立ち向かえる挑戦心、そして各自の長所を生かして協働して取り組むチームワークだということを考えさせられました。
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高校生による学会発表の様子 |
ところで、日本地球惑星科学連合以外にも高校生(場合によっては中学生も)の発表を受け入れてくれる学会があります。下の表にその主なものを示しますが、9月~11月と3月に多いことが分かります。コロナ禍も収まりましたが、参加者のことを配慮し、オンライン開催を続ける学会も多いようです。あと、気を付けなければならないのは、開催の2~3カ月前が発表申込締切になっている場合が多いことです。学会発表の目的は、何も賞を獲ることだけではありません。研究内容について他校生と議論したり、大学教授などからアドバイスをいただけたりすることもあります。高校生の皆さん、ひょっとしたら学会発表がきっかけで、将来の進路への道が拓けるかもしれませんよ。