皆さま、こんにちは。奈良県SSHコーディネーターの山田です。近畿地方も梅雨入りし、ぐずついた天気が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
今回は奈良県内のSSH校の1つである奈良県立青翔高等学校・青翔中学校の行事を紹介します。6月14日(土)に行われた「青翔サイエンス・クエスト」というユニークなタイトルの行事は、小学生がチームで協力して、科学の様々なジャンルの問題に挑み、得点を競い合うというものです。そして、その出題を担当しているのは、先生ではなく科学部やSSH委員などの生徒達なのです。この行事は今年度で13年目を迎えました。この長寿の秘訣は、単に近隣の小学生やその保護者を招待して、同校のSSH事業の成果を普及するばかりではなく、小学生への出題を通して中学生や高校生に主体性や創造性、更にはコミュニケーション力が身に付くようになっている点にあると思われます。これらの資質・能力は科学技術人材にとって非常に大切なもので、多くのSSH校が生徒に身に付けさせたい力として掲げています。
では、具体的な競技の内容について紹介します。今回は、算数、物理、化学、生物の4分野から各配点25点、計100点満点で競うものでした。私の専門である地学の分野からの出題が無かったのが少し残念ですが。それはさておき、まず算数分野ですが、こちらのお題は数列でした。簡単な等差数列からフィボナッチ数列まで並んだ問題を、小学生は興味をもって解いていました。次に物理分野ですが、アニメ『チ。ー地球の運動についてー』でお馴染みとなったアストロラーベという測定器具を使って、壁に貼り付けた星の高度を測定し、その正確さを競うといった問題です。このアストロラーベは、他にも太陽や恒星の位置から大まかな時刻や緯度・経度を求めることができるのです。続いて化学分野ですが、電池についての出題でした。実験を通して、鉄・銅・マグネシウムなどの金属を電池の-極になりやすい順番に並べるといったものです。これは高校生であれば、イオン化傾向から答えは推測できますが、それを知らない小学生たちはわくわくしながら実験していました。最後は生物分野ですが、海洋の酸性化についての考察問題でした。卵の殻が酢に溶けることから、二酸化炭素が多く溶け込み酸性化した海洋がサンゴなどに与える影響を文章で答えさせる問題でした。記述式ということで、採点が難しいところですが、生徒達は独自で考えた採点規準を用い、公平になるように採点していました。これも、同校が探究活動で行っている相互評価活動の成果だと言えます。各分野を担当した生徒達は事前に相談したわけではありませんでしたが、ふたを開けてみると計算・測定・実験・考察とバランスの良い内容でした。閉会式では奈良教育大学の先生に講評をいただき、参加した小学生も出題に携わった中学生・高校生も大満足でした。
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物理分野(アストロラーベでの測定の様子) |
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化学分野(電池の実験の様子) |