【第17回】 「基礎研究か?」それとも「社会実装か?」!

2026年10月30日金曜日

 皆さま、こんにちは。奈良県SSHコーディネーターの山田です。10月も下旬ということで、朝晩と日中の寒暖差が特に大きくなりがちですので、体調管理には十分に気をつけたいものです。各SSH校では、いよいよ探究活動(課題研究)の中間発表が始まるころではないでしょうか。

基礎研究か?社会実装か?(Geminiにより作画)

 さて、県立青翔高等学校・青翔中学校では、9月17日(木)に第1回SSH運営指導委員会が開催されました。以前も紹介いたしましたが、SSH運営指導委員会とは、SSH校の事業推進が計画通り進められているかについて、大学教授等の学識経験者からの意見を聞く会議です。この会議において、高校生の探究活動は社会実装を目指すべきか、それとも基礎研究も重視すべきかについてご議論いただきました。ご存じの方もいると思いますが、基礎研究とは、理学部で研究されるような自然界の真理や法則の解明を目指す研究のことです。例えば、超ミクロの世界を扱う素粒子物理学や、新元素の発見、数理モデルの解明などがこれにあたります。私が専門としている天文学も、ほとんどが基礎研究です。一方、社会実装すなわち応用研究とは、工学部や農学部、医学部、薬学部等で研究され、基礎研究によって得られた知識を活用し、実際の社会課題の解決や技術開発を目指す研究のことです。具体的な例としては、高効率な太陽光パネルの開発や病気の治療薬の創出、AIを用いた防災システムの構築などが挙げられます。近年の世間の風潮としては、直接的に社会の役に立つ社会実装が評価される傾向にあります。しかし、あらゆる社会実装も、過去に粘り強く行われた基礎研究を土台として成り立っています。例えば、1888年にドイツの物理学者ハインリヒ・ヘルツによって発見された電波は、その時は何の役に立つものか分かりませんでした。しかし、彼の死後、イタリアのグリエルモ・マルコーニがこの発見を応用して無線通信を発明し、これが今日のラジオ、テレビ、携帯電話といった現代社会を支える技術の発展につながったのです。

また、現行の学習指導要領では、「理数探究」の課題設定の方法として「自然や社会の様々な事象に関わり、そこから数学や理科などに関する課題を設定する。」と示されています。ここからも分かるように、「理数探究」のテーマとして決して基礎研究が推奨されていないわけではありません。自然現象への純粋な疑問から課題を設定し、探究を深めることは、指導要領の趣旨にも合致した大切なプロセスだと言えます。その証拠に、毎年8月に行われるSSH生徒研究発表会の上位12発表のうち約半数は基礎研究が選ばれています。今すぐに何かに役立つかという視点だけでなく、自分の知的好奇心を深く掘り下げた探究こそが、審査員の先生方からも高く評価されています。生徒の皆さんも、社会実装を目指す研究か基礎研究かにとらわれることなく、自分が魅力を感じる研究に自信をもって取り組んでください。それが将来的に、自分自身だけではなく、人類全体の幸福に役立つことになるかも知れません。

最後になりますが、以下の表に、令和8年度の高校生が発表可能な主な学会の一覧(改訂版)を添付しますので、外部発表の際に参考にしてください。(既に締め切られている学会もあるので注意してください。)